人は興味のあることしか話が耳に入らない。それを短時間で探るのが難しい

 お客様から、庭仕事をしていて虫に刺さた患部が腫れてるとの相談を受け売り場を案内し、薬の強さが大きく分けて3段階あることを説明したけれど話を聞いてないようで、自身で選ばれた。
 『ムヒSクリーム』に意識が行っていたところからすると、価格の安い物を探していたのかもしれない。
 予算は一番尋ねにくいことだから、正直最初に言ってもらえたほうが助かる。
 安い価格帯であれば、剤形の違う『液体ムヒS』の方がステロイド剤入りで効き目が強いことを伝えたうえで、『ムヒSクリーム』に近い弱めの処方でもっと安い『新ウナコーワクール』を紹介したところ、そちらを購入された。
 『ムヒSクリーム』や『新ウナコーワクール』は一番弱い部類で、痒み止めに抗炎症剤の他に弱い局所麻酔が入っていたりする。
 ここで勘違いされやすいのが、剤形が違っても中身が同じとは限らず、『液体ムヒS』にはステロイド剤が入っていて一段強い薬となる。
 ステロイド剤は副作用として、患部の免疫機能を弱くし皮膚の再生を阻害してしまうのだが、炎症を抑えることに優れており、皮膚疾患においては弱い薬をダラダラと長く使うよりも、早い段階で強い薬を使って症状を抑え、症状が軽減するに従って弱い薬に乗り換えていく「ステップダウン方式」が良いとされている。
 そして、ステロイド剤にも強さでランク分けがあって、『ムヒアルファEX』や『ウナコーワエースG』などは、より強い成分となっている。
 ちなみに、同じ処方内容であれば液剤よりもクリーム剤のほうが効果が高いと考えられる。
 というのも、液剤は塗り拡げるのに便利であるものの、皮膚のバリア機能は案外と高くて薬が浸透しにくいのに対し、クリーム剤はそのバリアを破って入っていきやすいように調整されている。
 また、虫刺されの塗り薬には軟膏タイプは無いが、ステロイド剤の軟膏があれば、ベトつくことによって患部を絆創膏のように保護してくれるので、患部が皮膚同士や服などと擦れてしまう場所なら、そちらを使ったほうが良いこともあるため、「初めから虫刺されの薬を」と思い込まないようにしてもらいたいところ。
 お客様に「レシートいらない」と言われたので、『医薬品副作用被害救済制度』があることをお話して、取っておいた方が良いことを伝えた。
 もし副作用が出て入院治療が必要な事態になった場合に治療費を申請できるのだが、購入した証明ができないと門前払いとなってしまう。
 すると、患部を切って膿を出した方が良いか訊かれたので、患部に膿があるのか確認すると「無い」というため、現在はそういう対処はしないことをお話した。
 もし膿んでいるようなら、虫刺されの薬やステロイド剤ではなく抗生物質の塗り薬を使うことになる。
 それにつけても、お客様は自身の興味のある話しか耳に入らないのだな、と改めて勉強になった。

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 お客様がスキンケアの棚でスマホを見ながら何か調べていたので気にかけていたところ、『アットノンEXジェル』をレジに持ってきたため、軟膏やクリーム剤との使い分けをお話すると手術痕に使うとのことだった。
 痛みや痒みは無いそうなのでヘパリン類似物質である『ピアソンHPクリーム』を案内すると、病院でもヘパリン類似物質のミルクタイプが処方されていると分かったので、そちらを先に使うようお話をした。
 ただ、医師は特に薬を使わなくても大丈夫と言っていたそうだ。
 私としても医師の判断に割り込むことはできないから、皮膚の再生には時間がかかることをお話した。
 皮膚の一番表面の薄い薄い薄い部分が再生するだけで、4週間はかかる。
 血流を良くして、水分と皮膚の材料を箱ぷのに役立つヘパリン類似物質は、それを手伝ってくれる。

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